久しぶりに帰省したら親の飲み忘れた薬が大量にあった
親がくすりを飲まないので怒ってしまった
飲み忘れたくすりはどうしたらいいのだろうか
こんな疑問にお答えします。
結論を言うと、飲み忘れたくすりをみつけたらそのまま薬局に持っていきましょう。
親がかかりつけ薬剤師を登録していればその薬剤師に相談するのがベストです。
帰省した時に親のくすりがたくさん残っていると、
「ちゃんとくすりを飲んでいないのかな?」と不安になることがありますよね。
でも実際はとても多くの人がくすりを飲み忘れて残しているのです。
筆者も薬剤師として薬局に勤務していますが、
多くの患者さんが「家にくすりがたくさん残っている」、と話をされます。
そこで、本記事では親が飲み忘れたくすりを見つけたらどうしたらよいか、わかりやすくご紹介していきますね。
そもそもなぜくすりを飲み忘れるの?
飲み忘れたくすりを見つけたときに、
「ちゃんとくすり飲まなきゃだめじゃない!」と、怒ってしまったことがある方もいるのではないでしょうか。
まず伝えたいのは、飲み忘れのくすりを見つけても怒らないで!ということ。
- きちんとくすりを飲めないなんてぼけてしまったのではないか
- 医師の指示通り治療しないと病気が悪くなるのではないか
そのような理由から怒ってしまう気持ちはよくわかります。
実際は多くの方が以下の様々な理由で薬を飲み忘れてしまうのです。
- 症状がないときに薬を毎日飲むことは大変なこと
- 薬がのみにくい
- 薬を飲みたくない
ひとつづつみていきましょう。
症状がないときに薬を毎日飲むことは大変なこと
持病がありくすりを飲んでいる人の多くは自覚症状がなく薬を飲んでいます。
けがで痛いから痛み止めをのむ
風邪をひいて咳が出るから咳止めをのむ
花粉症で鼻水がひどく抗アレルギー薬をのむ
若い世代では、上記のように、体調が悪いから病院へ行きくすりをもらうということがほとんどではないでしょうか。
自覚症状があれば、くすりを飲まないと症状が出て自分に不利益が出るので、飲み忘れることはあまりありません。
さらに飲み忘れたときは症状が出るのでくすりの効果を実感できます。
くすりを飲むモチベーションが明確だから飲み忘れは少なくなります。
しかし、自覚症状がなくてくすりをのむ場合はどうでしょうか。
高血圧の薬がわかりやすいですね。
血圧が少し高いからと言って痛みがでることはまれです。
飲み忘れたからといって急に症状がでるものではありません。
自覚症状がない場合、毎日忘れずにくすりをのむことはとても難しいことなのです。
くすりが飲みにくい
ただ飲みにくいといっても、
① 飲む時間が忘れやすい
② くすりの形が飲みづらい
③ くすりの味が飲みづらい
といった理由に分けられます。
特に1日3回のむくすりになると飲み忘れは格段に多くなります。
また、加齢にともないのみこむ力はおちていくので、
大きな錠剤やカプセルはのみにくいと感じることがふえてきます。
くすりが飲みにくいときにどうしたらよいかは別記事で説明していますのでよかったらご覧ください。
くすりを飲みたくない
そもそもくすりを飲みたくないという方も一定数います。
自分は病気ではないからくすりを飲む必要がない、
認知症による認知機能の低下で自分が病気であることや薬を飲まなくてはいけない状況が理解できていない、
などの理由で服薬を拒否している場合もあります。
くすりを飲んでくれない時は、言い方をかえ、人を変え、場合によっては医師から伝えてもらうなど
根気強く対応する必要があります。
一方、くすりを飲むことで起きる副作用が原因で、服薬を拒否しているケースもあります。
「このくすりを飲むと体調が悪くなるから」という場合はくすりを変更したり中止することもあります。
以上のように、様々な理由からくすりを飲み忘れてしまうのです
親のくすりの飲み忘れを見つけたときは、
怒る前に一度このことを思いだして理由について聞いてみてください。
飲み残しの薬は使えるのか
続いて気になることは、「この残ったくすりは使えるのか」
ということですね。
患者さんからも、家に余っているくすりはどのくらい持つのか。と聞かれることがあります。
他の薬局でもらったおくすりの場合は答えられません。
自店舗で渡している薬の場合、期限は薬によって異なりますが
飲み薬はだいたい1年前くらいのものは飲める。
とお答えすることが多いです。
ぬりくすりなどの外用薬はくすり自体に使用期限が書いてあるものが多いです。
薬をもらった薬局に一度聞いてみましょう。
「残薬があるから返品したい。」とも言われますが、
一度お渡ししたくすりは返品はできません。
余っている薬があることを医師、薬剤師に相談しましょう
飲み忘れたくすりを使用するには以下の方法があります。
① 医師に余っている薬を伝えて日数調節する。
② 薬剤師に伝えて、医師に疑義紹介し、日数調節する。
ここでわかっていただきたいのは、
処方した医師に確認しないと薬局で勝手に処方内容を変えることはできないということです。
医師によっては、患者さんの残薬について直接本人に聞きたい、
という方が多いので、
まず医師に残薬の状況、理由があれば理由も説明しましょう。
でも医師との問診では、
- 現在の症状
- こまっていること
- 今後の治療方針
など、話したいことがたくさんあり、くすりの話までできないことがあります。
その時は薬局で相談しましょう。
特に現物があり、数えるのが大変だったり、
ばらばらの薬を一包化してほしいという場合は
薬局に直接もっていくことをおすすめします。
患者さんによっては
「医師にくすりを飲んでいないことが伝わるのがいや」
というひとがいます。
くすりの服用状況を医師、薬剤師に伝えることは、以下の3つの点で大切です。
1)今使っている薬の効果を正しく評価するため
例えば、毎日服用する薬を時々しか服用できていなかった場合、
1か月後に医師が症状を確認した際に、期待される効果が得られていないかもしれません。
もし、その服用状況を医師に伝えなければ、
本来適した量の薬であるにも関わらず、その量では効果が不十分と判断されてしまいます。
そして、薬の量を増やすことや、別の薬の追加や変更を検討するかもしれません。
必要以上に薬の量や種類が増えることで、副作用がでたり、さらに飲み忘れやすくなってしまいます。
2)使われずに残ってしまう薬=「残薬」を減らすため
多くの場合、病院で処方された医療用医薬品の費用は、保険や税金で負担されています。
薬局の窓口で支払う自己負担の金額は、
年齢や所得などに応じてその0~3割程度となっています。
窓口負担が少ないからといって残薬を放置している方も多いですが、
多くの人が、未来の自分や子供達がより良い治療を受けられるためにも、
「無駄」を減らしていくことは大切なことです。
3)薬を正しく服用するための対策や支援を考えるため
まさにこの記事で伝えたいことです。
薬局できることとして以下のようなことがあります。
・おくすりの飲み忘れを減らすような方法を提案。
・ばらばらになって管理しきれなくなったおくすりを整理する。
・必要があれば服用方法で飲むくすりをまとめる一包化を提案する。
これらの支援は医師に報告しながら行います。
飲み忘れの原因を一緒に考えて、負担が少なく続けられる方法を見つけましょう。
医師はわかっています。
出されたくすりを全て飲めている人は少ない。ということを。
適切に治療するために大切なのは、どのくらい薬が飲めているのかをきちんと医師に伝えることです。
うまく治療ができている人は
「今回は仕事が忙しくてのみ忘れることが多かった。数値が悪くなっているかもしれない。」
と医師に伝えることができています。
ここで注意したいことは手持ちのくすりはぎりぎりにしないということです。
毎日飲んでいるような薬は、最低でも7日から10日分は手元に残すようにしてください。
薬局にのみ残した薬を持って行って大丈夫?
薬局に急に持って行って大丈夫だろうか。と心配な方もいるでしょう。
親のくすりの管理を考えたときに、
かかりつけ薬剤師がいれば、その薬剤師に相談したらOKです。
かかりつけで登録していなくても薬局で残薬の整理は可能です。
できれば一度使ったことのある薬局のほうが話がスムーズなので、
行ったことがある薬局に相談してみましょう。
残薬調節に時間がかかることもあるので、急いでいるときは次の受診の時までにお願いするとよいでしょう。
次回は、くすりがのみにくい場合どうしたらよいか、についてご紹介していきます!