親の薬管理:親がくすりをのまない、飲みにくい理由

たくさんの薬を前に困る男性
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どうして親はくすりを飲み忘れるのか
自覚症状がないと飲み続けるのが大変、ということがわかっても
たくさんのこっているくすりを見ると心配

ということがありますよね。

前回、飲み忘れたくすりを見つけたときに医師に伝えて薬局に持ち込むとよいよという話をしました。
自覚症状がないとくすりを飲み忘れしやすいよと。
それを理解してもやっぱり親がくすりを飲んでいないと心配だし怒ってしまう。

親は親で好きで飲み忘れているわけではないのです。
そこには「のみにくい」理由がかくされているはずです。

のみにくさの理由について考えてみましょう。

目次

くすりをのみにくいと感じる理由5選

<のみにくい理由5選>

  • のむ回数が多い
  • のむ時間が生活習慣に合っていない
  • 形がのみづらい
  • 味がのみづらい
  • のむと体調がわるくなる

似ているように思うものもあるかもしれません。
ひとつずつ見ていきましょう。

飲む回数が多い

1日1回のめばよい薬に比べて1日3回のむ薬は飲み忘れが格段に多くなります。
特に昼食後のくすりの飲み忘れの多さはひどいです。

「朝夕は飲めるんだけど昼は外出していて飲むのをわすれちゃって。」

ほんとうによくあります。

ご自身の生活を考えていても昼は会社にいて忙しいときはお昼ご飯を食べられなかった。
ということもありますよね。
会社の人や友人に薬を飲んでいるところを見られたくないという気持ちもあるかもしれません。

そのような理由から飲む回数が多くなると飲み忘れが多くなります。

話が横にそれますが、
「親が1日3回もくすりを飲んでいるんだけどそんなにひどくなっちゃったのかな。」と聞かれることがあります。
1日3回の薬を飲んでいるからと言って症状がひどいというわけではありません。
何回飲むかはくすりの性質の問題で強弱とはあまり関係ありません。

くすりが持続的に体内で効果を発揮するには、血液中に一定濃度なくてはいけません。
1日3回服用する薬を1回や2回しか服用できなかった場合には、血液中の薬の濃度は低くなってしまいます。
くすりの血中濃度を一定にするために薬によって決まっているタイミング(用法)に、決まった数(用量)を飲むことが大切です。

そんなことはわかっているけれどめんどうくさい。
そのとおりです。もっと服用回数が多い薬もあります。
だから、みんな困っているのです。

<対策>
くすりをのむ負担を減らすためにできることはこんなことです。

・1日3回のむくすりの同じ成分で、1日1回でよい薬がないか相談する
くすりによっては、同じ成分で1日1回服用でよいくすりがあります。
徐々に溶け出してくる徐放性のものにかわります。
この場合、くすりの成分が多くなるので大き目の錠剤に変わることが多いです。
のみこみに問題ない場合は有用です。

・そもそも昼は飲む必要があるか相談する
これは前提として昼にくすりが飲めない場合です。
のめるのであれば飲めるにこしたことはありません。
でもどうしても昼だけ飲めなくて飲み残しがたまってつらい。
そういう場合は相談してみましょう。
整腸剤や胃薬など自覚症状がなく緊急でない場合は1日2回で様子を見るという判断もあります。

くすりを飲む時間が生活習慣に合っていない

会社に行っている人が昼にのみにくい、と感じるように、
生活習慣によってのめないという場合もあります。

「朝食後服用の薬があるが、夜勤があり朝は寝ていることがある。」
「朝はバタバタして忘れてしまう。夕方のほうがゆっくりしているので忘れにくい」
「1日2回しか食事をとらないので2回しかのめない」
「A病院は朝食後でB病院のくすりは夕食後。ばらばらで忘れてしまう」

生活習慣によってのみにくい時間帯はあるはずです。

<対策>

・服用方法をまとめられないか相談する。
食後と書いてあるから食事をとらないと飲んではいけないと考えている方は多いです。
もちろん食事をとってから飲まなくてはならない薬もあります。
しかし、くすりによっては食事の影響を受けず薬だけ服用してもよいものがあります。
血圧を下げるくすりや整腸剤、ビタミン剤は食事の有無と関係ないことが多いです。
忘れにくいように便宜的に食後と指示されていることもあるので、
食事をとる習慣がない、食後に気をとられて忘れてしまう場合は確認しましょう。

形がのみづらい

年をとってくるとだんだんものが飲みこみづらくなります。
老化現象なのでしかたのないことです。
「嚥下(えんげ)機能が低下する」という言葉を使います。

「カプセルがのどに貼りついてのみづらい」
「細長い錠剤がのみこみづらい」
「錠剤がのみづらいことを心配して粉にしてくれたけど粉のほうが飲みづらかった」

物理的にのみこみづらさを感じている場合があります。

<対策>
くすりの形(剤型)はたくさん選択肢があります。

認知症治療薬のドネペジルは剤型も多く、

錠剤、OD錠、細粒、ドライシロップ、ODフィルム、内用液、ゼリーと多岐にわたります。

くすりの成分ごとに、販売されている剤型は異なるので、飲みやすい薬はないか確認してみるとよいでしょう。
のみこみが難しい場合、成分によっては張り薬を使うという選択肢もあります。

注意が必要なのはのみこみが大変だからといって、
自分でつぶしたりかみ砕いて飲んでいる場合です。
錠剤には、砕いて飲んでも効果の変わらないものと、砕いてはいけないものがあります。
徐々に溶け出す徐放性製剤や胃ではなく腸で溶けるように設計されたくすりは砕いてはいけません。

味がのみづらい

さらに単純に味が好みと合わないことがあります。

「口の中で溶けて飲みこみやすいけど味が悪くて」
「漢方の香りが苦手でのみづらい」

そんな時は以下のような対策があります。

<対策>
・オブラート、服薬ゼリーを使う
・くすりのメーカーを変更してみる

服薬補助はオブラートのイメージが強いですが
漢方用、抗生物質用など服薬ゼリーも日々進化しています。
2023年10月には知育菓子「ねるねるねるね」の服薬補助剤も販売されました。
色々な種類が販売されているので試してみたいですね。

ここまで説明してきた4つの理由はどれも、絶対無理なわけではなく我慢できるものです。

「病気の治療で医師が出してくれたくすりだから。
形や味についてどうこういうなんてわがままなんじゃないか。」

そのように我慢をしている方は多いのではないでしょうか。
そんなことはありません。
毎日続ける薬だから、しなくてよい我慢はしなくてよいと思っています。

薬局でくすりのメーカー変更や規格の変更、似ている剤型への変更はできることがあります。
しかし、いまは全国的に薬の流通が滞っており、
希望に添えないこともあるのでその点はご了承ください。

のむと体調がわるくなる

この理由は最も注意が必要です。

「のむと少し気持ち悪いのよね。」
「この薬を飲むとねむくなってしまう」
「トイレが近くなるから飲みたくない」

体調が悪くなるなら医師に伝えればよいのに、と思われるかもしれません。

ですが、日本人は本当に我慢づよい。
我慢できる程度だから、時間がたつとよくなるから。と、医師に伝えることをやめてしまうことがあります。

我慢できるくらいの体調わるさが実はくすりの副作用である、ということもあります。

飲みにくい理由がわかったら?

前項で、くすりを「のみにくい」と感じる理由を説明しました。
薬局でも飲みにくさについて相談いただくことは多いです。

上記のことを相談いただいて解決策が思いついても、極一部を除いて薬剤師は勝手に薬の内容を変えることはできません。
必ず医師への問い合わせが必要となります。
それなら医師に直接言ったほうが早いのでは、となります。

そうです。医師に伝えてください。

ただ、先ほども言った通り、多くの人は自分のわがままだと伝えることを我慢してしまうのです。
伝えてくれたら意外とすぐ解決できることもあります。

医師に伝え忘れたときの補助として、
あるいは、
医師に伝える前のおためしとして、薬剤師を使ってみてください。

さいごに

目の前に親のくすりの飲み残しがあって困っている人は、お茶でも飲みながらやさしく聞いてみてください。

「くすりをのみにくい理由があるの?」

思ってもない理由がでてくるかもしれません。

体調については必ず医師に伝える必要がありますが、
医師に伝えるほどでもないかなと思ったことはぜひ薬剤師に伝えてみてほしいです。

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この記事を書いた人

はじめまして。

薬剤師ぷふまると申します。
薬局薬剤師として働いています。


学業、仕事で親元を離れて早十数年。
ここのところ親の衰えを如実に実感するようになりました。


本ブログでは、
介護について仕事での経験や調べた知識について発信していきます。
介護の基礎知識や育児との両立についてなど、
親の介護がまだはじまっていない段階で知っておいた方が良いことをまとめています。

私と同じように、親の介護でもやもやや不安をかかえるプレ介護世代のとっかかりとなって頂ければ幸いです。

よろしくお願いします。

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